ギターの塗装の話3、厚塗りって?ポリってなに?
mottoたのしいギターの世界へようこそ。
ギター評論家のアッキーです。ギターの練習の合間のハシヤスメとして読んでいただけたら嬉しです。
ギターに関する学術的な知識が記載されたブログは多いので、ここでは実際に17年間ギターを作ってきた私の感じている事を述べています。
前回までのラッカー塗装に対してよく比較される ”ポリ“ 塗装について語っていきたいと思います。
一口にポリといっても、
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ポリウレタン
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ポリエステル
のに種類に分かれます。名前が似てますが全く特徴が違います。
よくラッカーは薄い、ポリは厚いといわれがちの“ポリ”とはポリエチレンのことです。逆にポリウレタンは扱いやすい粘土でうすう塗りからそこそこ厚塗りも対応できます。
《ここで一旦時を戻そう》
そもそも薄塗りとか厚塗りってどうゆうこと???
前回までの話で仕上がりの厚さは塗布と研磨の技術です、と言ってきましたが、やはり塗料によって特徴があるのでここでおさらいします。
喩えるなら、“ウナクールを塗るのと、馬油を塗るのとの違いです。”
腕にウナクールをすぅーっと塗るのと、馬油をうでにぬぅーっと塗るのでは一回で作れる厚みが違いますよね?
ウナクールを乾く前に塗り続ければ肌からの厚みは作れますし、馬油を少量伸ばしての塗り込めば薄く塗れます。
これが、塗料の性質と、技術と厚さの関係なのですが、どうでしょう?伝わりましたでしょうか?
そうなると、ラッカー(ウナクール)で目的の厚さを形成する手間と、ポリエステル(馬油)で目的の厚さまで形成するのでは制作工程が大幅に変わってきます。
《制作時間は=費用なのです。》
なのでラッカーは高額になります。
したがってポリエステルで仕上げたギターはリーズナブルに提供できるわけです。
しかし、前回からも述べているように薄く仕上げる事もできます。
「じゃあ薄く仕上げればいいじゃないですか!」
違うのです、ギターは楽器ですが、企業が経済活動として作成している工業製品なのです。
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音色がより響くようにと、作るものもあれば
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売りやすい、買ってもらいやすいようにという前提で作っているものに分かれます。
そこで、加工がしやすく作業時間も短くて済むポリエステル塗料が活躍するのです。
どれくらい作業工程が違うかというと、例えば0.08mm程度の仕上がりを目指してラッカーで吹き付けるなら、乾燥研磨含めて塗装工程だけで1ヶ月半はかかるところ、
ポリエステル塗料を用いれば、2週間程度で塗装工程を終える事ができるでしょう。
ポリエステル塗料下塗りできっちりベースを作った後の、いわゆる肉付け塗料なのですが、その肉付け工程を一回の吹き付けと1日乾燥のみで仕上げる事ができます。
ラッカー塗料の同工程は2週間ほどかかります。
そこで、メーカー側としては、より早く多く仕上げるために塗装の厚みに関しては、薄さ(音)よりも厚さ(作業効率)を優先します。ある程度厚く一発で仕上げた方がその後の研磨工程が楽ですからね。
この構図が
- ラッカーは薄く音が響く
- ポリは厚く響きが悪い
という状況を生んでいるのです。なので、ポリエステルでも極薄塗布で研磨も高い技術力で仕上がっているものはかなり響きます。
ん!?前回、厚みじゃなく硬さが重要と言いってましたよね?
ポリエステル塗料は完全硬化すると硬いです。
やはり同じ塗装膜を形成したとき、他に比べポリエステル塗装は楽器自体の共鳴を抑えてしまうとは言えるとおもいます。
利点としてはちょっとやそっとじゃ傷にや打痕はつきません。あと、長期間放ったらかしても変形しにくいでしょう。
ただ、音色を作る要因は他にも沢山あるので、ポリエステル塗料で仕上げられたから“ならない”ギターというわけではありません。
ポリエステル塗料で仕上げたギターでもラッカーで仕上げたモデルよりよく鳴るギターも沢山あります。
ってゆうか、そもそも私のギターはポリエステルなの?何なの?という場合がほとんどのことでしょう、いちがいに言えませんが定価が10万円以下に設定されているほとんどがポリエステルと言ってもいいでしょう。
やはり大切なのは、素材ではないのでしょうね。
料理のように、味わってたべなければ何を食べても同じですし、
食卓がたのしければ、なんでも美味しいじゃない!
ギターも一緒です(╹◡╹)
では、次回お待ちかね、真打登場!ポリウレタン編をお楽しみに!
アッキーでした、バイバイ!
《おまけ》