ギターの塗装の話4.1 会社と塗料と厚みの関係
《前回からの続き》
「じゃあ薄く仕上げればいいじゃないですか!」
違うのです、ギターは楽器ですが、企業が経済活動として作成している工業製品なのです。
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音色がより響くようにと、作るものもあれば
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売りやすい、買ってもらいやすいようにという前提で作っているものに分かれます。
そこで、加工がしやすく作業時間も短くて済むポリエステル塗料が活躍するのです。
どれくらい作業工程が違うかというと、例えば0.08mm程度の仕上がりを目指してラッカーで吹き付けるなら、乾燥研磨含めて塗装工程だけで1ヶ月半はかかるところ、
ポリエステル塗料を用いれば、2週間程度で塗装工程を終える事ができるでしょう。
ポリエステル塗料下塗りできっちりベースを作った後の、いわゆる肉付け塗料なのですが、その肉付け工程を一回の吹き付けと1日乾燥のみで仕上げる事ができます。
ラッカー塗料の同工程は2週間ほどかかります。
そこで、メーカー側としては、より早く多く仕上げるために塗装の厚みに関しては、薄さ(音)よりも厚さ(作業効率)を優先します。ある程度厚く一発で仕上げた方がその後の研磨工程が楽ですからね。
この構図が
- ラッカーは薄く音が響く
- ポリは厚く響きが悪い
という状況を生んでいるのです。なので、ポリエステルでも極薄塗布で研磨も高い技術力で仕上がっているものはかなり響きます。
ん!?前回、厚みじゃなく硬さが重要と言いってましたよね?
ポリエステル塗料は完全硬化すると硬いです。
やはり同じ塗装膜を形成したとき、他に比べポリエステル塗装は楽器自体の共鳴を抑えてしまいます。
利点としてはちょっとやそっとじゃ傷や打痕はつきません。あと、長期間放ったらかしても変形しにくいでしょう。
ただ、音色を作る要因は他にも沢山あるので、ポリエステル塗料で仕上げられたから“ならない”ギターというわけではありません。
中にはポリエステル塗料で仕上げたギターでもラッカーで仕上げたモデルよりよく鳴るギターに出会う時があります。
これは私の所有している
モーリスの1981年製 MWH−03です。(70年代のギブソンハミングバードのスーパーコピー)販売から3年後にギブソン社からのクレームで販売終了しています。
製造は当時委託していた寺田楽器製です。
塗装はポリエステルです。結構厚塗りされてますので、ポリエステルを厚塗りしたときの劣化
(白色化)が両肩に見られます。
ですが、お気に入りの1本です!!
さらにいうと、ラッカートップというラッカー仕上げの製品があります。
いくつもの塗装工程を踏んできて、最後の最後トップコートのみラッカー塗料を用いるものです。
ラッカー塗料特有の見た目の風合いと、さわり心地のためだと思っていいと思います。
《ここまでのまとめ》
- ラッカーと比較される塗料のポリとはポリエステルのこと!
- ポリには、ポリエステルと似て非なるポリウレタンがある
- 価格が違うのは作業にかかるコストであって、音とは切り離して考えよう。
- なんでも利点と欠点がある
では、次回、真打登場!ポリエステルと似て非なるポチウレタン編突入です!お楽しみに
アッキーでした、バイバイ。